建築家として、そして大学非常勤講師としての顔。住宅だけではなく、美術館等の大型公共施設も数多く手がけてきた永曽琢夫氏にStyle&Decoの谷島がインタビュー。住み替え、二拠点生活、移住。50代以上の大人が憧れる暮らしを提案する永曽氏に、これからの大人のライフスタイルについて伺いました。

 二拠点、移住 これからの50代の暮らしを考える 

谷島
設計された事例(吉峰の家)を拝見していると、日本の伝統的な家の中に、ひとつひとつこだわりのある家具や書が配置されていますね。書斎スペースも別棟でありお施主さまのこだわりを感じます。
 

 
永曽

こちらは父の家ですが、設計を依頼された時は、東京にもうひとつ家があるため、東京と富山の二拠点生活の富山の拠点として設計しました。今では、富山の家にいることが多い父ですが、建てた当時は、月に2〜3回は上京していました。東京では、お芝居を5〜6本まとめて見たりと東京でしかできない生活を楽しむ二拠点生活ですね。

 

谷島
別棟にある書斎スペースは、どのような使い方をされているのですか?

 

永曽
演出家の父は、文章を書いたり、調べ物をしたりして過ごすことが多いようです。ゆったりと過ごせる工夫をしています。書斎スペースが完成したときは、近くの陶芸家の方が、陶芸のギャラリーとして利用したり。優雅な使い方ですよね。今は、隣の敷地も購入し公園をつくって、誰でも入っていい空間をつくり、お琴の演奏会を開いたり、楽しんでいるようです。

 

谷島
まさに人生をとことん楽しむ場所ですね。

 「サラリーマン」「LDK」「団体旅行」
固定概念からの脱却

 
 

谷島
子供の手が離れたり、余裕も出てくる50代以降、より人生を楽しむための住み替えや移住、二拠点生活などのライフスタイルを希望される方も増えていますか?50代以上の大人の方々の傾向があれば教えていただけますか?

 

永曽
そうですね。私自身も現在57歳で、子供も独立したこともあり、妻と「小さいところに移りたいね」という話をしました。そうして、今まで住んでいた郊外の戸建の自宅から利便性のいいマンションへと移り住んだんです。新しい住まいは、使い勝手がいいようにリノベーションをしました。マンションのよくある間取りを自分たちの使い勝手のいいように変更したり、照明を間接照明に変えたり、障子をいれたり、植栽をいれたりと2人の今の暮らしを楽しんでいます。
私の周りの50代は固定概念にしばられない自由な発想ができる人が多いんです。たとえば、旅行ひとつとっても、皆が同じ行動を取らなければいけない団体旅行を好みません。皆、自分たちがやりたいことが明確でプランも自分たちで組みますし、住まいも固定概念に捕われた○LDKでなければいけないという考えを持つ方も少ないですね。仕事もサラリーマンという選択肢だけではなく、色々な価値観で選ぶことができる。こういった考えが一般的ですよね、と言える最初の世代でありたいと思っています。だから、こういった考え方や暮らしをどんどん発信して広めていきたいですね。

 
余白の空間の表現

永曽
私が50代以上のお施主さんと設計をする場合、余白の空間をいかに表現するかは腕の見せ所だと思います。美術品を持っている方であれば、ギャラリーを設けることも可能です。今まで美術館などを多く手がけてきましたので、住宅とギャラリーとの融合は得意だと思います。 もともと日本の家には床の間というギャラリーがありますしね。  

 

谷島
美術品はハードルが高いと思われる方もいらっしゃるかも。

 

永曽
もちろん、ギャラリーという使い方は一例で、お客様お一人おひとりのライフスタイルに合わせた提案が可能ですよ。例えば、私は植栽が好きなので自宅でもマンションに引っ越した後に、植栽のスペースを多くとっています。高さが2〜3メートルのを木をもってくるとインパクトがでる。大きな木を入れるだけで空間が変わりますよね。たとえば、以前はお子さんが使っていた子供部屋をなくして、その分を植栽のスペースにする。それだけでゆとりのある今の自分たちにフィットした暮らしに変えることができます。

 

谷島
設計に加えて、植栽などの+αのアドバイスはいただけるのでしょうか?

 

永曽
もちろんです。私は、大人のこれからの暮らしにはメンテナンスが簡単だということも大事だと考えています。例えば、植栽であれば、計画の時点では花をあえて入れないという考え方もあります。花は寿命もあるし、季節のものを花瓶に飾るという考え方です。木もホームセンターで購入できる、ポトスだとかヤシの木、ベンジャミンなどよく聞く植栽をうまく組み合わせるだけでも空間がかわりますよ。一緒に考えていきましょう。

 

谷島
トータルで暮らしを相談できるのはとても嬉しいですね。

 

永曽
今の50代以上は、バブルも経験し、物を所有することの楽しさを知っている世代です。その余裕を上手く表現するお手伝いができればと思います。

 
最後に

建築家としての経歴や現役の大学非常勤講師という肩書きから感じる敷居の高さから、はじめて会うときは構えてしまいましたが(笑)実際にお会いすると柔らかな物腰、ざっくばらんにいろいろなことを相談できる雰囲気に、いい意味で裏切られ、これからの人生を更に楽しむための余白を永曽氏と一緒にデザインできれば人生はもっと楽しくできる。と感じたインタビューでした。
 
ありがとうございます。

Profile vol.02

Designer's profile vol.02
永曽 琢夫
設計計画一級建築士事務所  代表取締役
一級建築士

1959年 東京生まれ
1982年 日本大学理工学部建築学科卒業
1982年 桜建賞(卒業設計最優秀賞)
1982年 久米建築事務所(久米設計) 入社
1998年 谷口建築設計研究所(谷口吉生)入所
2003年 第33回中部建築賞入賞(住宅部門最優秀賞)
2014年 株式会社設計計画 設立