『大人のリノベーション』の発起人である内山章さんへ、Style&Deco代表の谷島がインタビュー。
プロジェクト立ち上げのきっかけから、これからのリノベーション業界に求められていることを伺ってきました。

 大人のリノベーション誕生のきっかけ

 

谷島
内山さんが考え始めた『大人のリノベーション』。このプロジェクトを立ち上げたいと思ったきっかけを伺えますか?

内山
現在、リノベーションを楽しんでいる世代は、はじめてマイホームを購入する30代が中心のようです。最近たくさんの事例がメディアでも見ることができるようになりました。ですが、リノベーションが浸透していく中、この仕事を通じて、これから増えてくる50代60代の世代にこそ、リノベーションという住まいの選択肢を知って欲しいと思うようになっていきました。自分が第一線で仕事をしているとき、子供が巣立ち夫婦二人になったとき、万が一、自分が動けなくなったときなど、いろいろなライフステージがこれから待っているわけです。その中で、50代、60代では、まだ住宅ローンが残っている。つまり抱えているわけです。
そんなときでも、もっと他の、別なところにも豊かな住まい方があるんだ、収入によってライフステージが変わっていっても選択肢がちゃんと用意されているということが大事だと考えるようになりました。そんな中、リノベーションという考え方も、日本ではようやく認知されてきたばかりで、まだ50代、60代の大人に対してリノベーションを通した暮らし方の提案を出来る人があまりいないんじゃないかと思ったのがきっかけでした。
 

僕はいま45歳(※2013年8月時点)なのですが、個人的には、リノベーションの市場自体を広げていかなければという思いもあります。
現在の市場だけであれば、今元気な30代のリノベーションのプレイヤーで十分。ただそれだけはやっぱり足りなくて、ぼくの世代が市場に対して、何かポジティブにできることと言えば、同世代と、それよりも上の世代に向けて、できることがあるのではないかと思いました。50代、60代の人がリノベーションをするときは、それはその世代特有の様々なファクターがあるはずです。終の住処をどうするかという問題もあるし、高齢化していく体の問題もあります。変化する家族の形態のこともあるし、またやり残していることに対してポジティブでありたいという気持ちが生まれたりもする。そのような、年齢を重ねてきたからこそ見えてくるような事柄が多くあります。そういうことに対して、ある程度経験を積んでいる(建築業界ではまだ若手と言われますが)僕らの世代から上の建築家だからこそ出来ることがあると思い、『大人のリノベーション』を立ち上げようといろいろ模索する中、ある時、谷島さんに声をかけました。

谷島
お声がけいただいた時、普段EcoDecoに来られるお客様である30代の方々と何が違うのか考えました。私たちの世代で家を購入するのは、結婚や出産を機に、新たなメンバーで新たに生活をスタートしていくためのものです。今まで、実家暮らしや、賃貸で暮らしているお客様がほとんどで、はじめての家づくりという経験に、素敵な暮らしをしたいという願望が多くあります。好きな雑誌を見てこんな暮らしが良いよね、と好きなテイストの擦り合わせを家族でスタートします。だから家具もすべて新規という方も多いのです。若い人々は、これからの暮らしに自分たちを合わせているようなレンジの広さをもっていると思います。
 

 

 

大人がリノベーションに求めること

 
谷島
しかし、『大人のリノベーション』は、ゼロから新しいものを築くというよりも、これまでの彼らの人生の歴史や背景をすべて受け止め反映させて、本当に好きな物、囲まれていて心地の良いものを最優先する暮らしをつくるものだと思いました。若い方のリノベーションは、ファッションの一部として考えられている面もありトレンドも重視した家づくりになることもありますが『大人のリノベーション』は、トレンドよりも自分の内面重視ではないでしょうか。そのため、彼らの歴史を受け止めるという作業がとても重要で、設計者にもある程度の人生経験が必要だと思っています。彼らのライフスタイルや背景をわかっていたほうが、受け止めやすい。

内山
そうですね。『大人のリノベーション』は、スタートではなくターニングポイントのシンボルをつくるようなイメージです。ぼくのヒアリングの仕方は特殊かもしれません。最初に、部屋の広さや収納の大きさ等の具体的なことはあまり聞きません。クライアントは私たちよりも10歳、20歳も上の先輩たちで、彼らの話がとても面白い。まずその人の人生の話をしていただくことが多いのです。

谷島
普通の設計よりも、彼らの人生を紐解く作業が多くあるのだろうと思いますが、実際にはどうですか?

内山
彼らの話を聞いていると、良いものが高いものということを意味するわけでなく、その人にとって価値の高いものであるということがよくわかります。それはその人の内面を見つめる作業になり、最初はもちろん雑誌の切り抜きなどをお持ちになる場合もあるのですが、設計が進むに連れて、設計をすると他の人は住むことのできない、彼らのためのだけの家になっていきます。

谷島
確かにそうですね。プロジェクトのなかで、内山さんが関わることで、今まで好きだったものが、より研ぎすまされていると感じました。内山さんは、リノベーションの設計はもちろんですが、カーテンやソファの家具を一緒に選んだり、ディフューザーのアロマを選んだりと、リノベーションだけではなく、お客様の暮らし、生活そのものをプロデュースされている印象を受けました。


内山
彼らは格好良いものを持っているのではなく、自分にフィットするものを持っている。おしゃれな人は高いものを持っているからおしゃれなのではなくて、自分に何が合うかをわかっている人がおしゃれな人だと思います。今までにさんざん失敗しているからわかっているんですね(笑)そういう感じだと思います。
そのフィットするものに気づいてもらい、活かして設計するということがライフスタイルのデザインだと思います。これが好きなものであるという背景が、歳を重ねているだけ自分の中にちゃんとある。だから自分にないものを求める感じではなく「自分はこれが好き」ということの延長線の中に暮らしがあります。
こちらも自分の「好き」がちゃんとわかっている人間じゃないと、なかなか他人の「好き」を理解できない。そのためにはやはり経験が必要になる。自分がなぜこれが好きか説明するのはとても難しいことですから。言葉にできない自分の好きさ加減をきちんと具現化してデザインに持っていかないといけない。(形ではない)自分のなかのスタイルがあると良いと思います。

谷島
内山さんとリノベーションのプロジェクトをスタートさせることで、家が新しくなるだけではなく、自分の歴史が整理されこれからの人生をより豊かに暮らすための土台をセンスよく整えてくれる。心強い暮らしのプロデューサーを味方につけることができますね。

Profile vol.01

Designer's profile vol.01
内山 章
スタジオA建築設計事務所  代表取締役
一級建築士

1968年 横浜生まれ
1991年 東京造形大学デザイン科 卒業
1991年 株式会社丹青社 入社
1997年 スタジオA建築設計事務所 設立
1999年 福島県郡山市建築文化賞 最優秀
2005年 日本商環境設計家協会 JDCデザインアワード 入賞