神奈川県郊外の一戸建てから都心の中古マンションをリノベーションし、引越されたK様に、
設計者で『大人のリノベーション』発起人の内山章さんと、Style&Deco代表の谷島がインタビュー。

子育て世代とは少し違う価値観のリノベーションとは?

一戸建てから中古マンションへのお引越し

 

谷島
以前は一戸建てに住まれていたのですね。

K様
そうです。鶴見に住んでいました。2000年から2009年までニューヨークに住んでいました。鶴見ではJRを使っていて東横線は使っていなかったこともあり、都立大学には来たこともありませんでした。ただ、物件を探す条件として、駅から近く、ある程度の広さのあるお部屋を探していたんですが、この場所は条件に合い、、明るさも気に入り即決しました。住んでみると、都立大はとても便利で、新宿や銀座に出るのが楽になりました。これからは自由が丘を開拓するのが楽しみです。

谷島
現在のお宅も広いのですが、一戸建てに住まれていた頃はもっと広いところにお住まいだったのですよね。

K様
そうです。敷地が100坪弱で建坪70坪程度の木造住宅に最初は6人で住んでいました。収納が多くあり、トイレも3つありました。6人いたので、荷物がかなりたくさんありました。

内山
Kさんに限らず、皆さん、ものがたくさんあって大変です(笑)コレクションも多くて、バービー人形などもたくさんありましたね。

K様
バービー人形は、本当は何百体と持っていたのですが、これを機に処分しました。シュタイフの熊は母が好きで集めていたので、どうしても飾っておきたいと思っていました。この飾り棚は持っていたもので、これだけは持ち込もうとはじめから考えていたものです。

内山
設計では、この飾り棚やコレクションが自然に馴染むような空間にしようとしました。




 


気の合う設計者との共同作業






谷島
内山さんを選ばれた理由はどうしてですか。

K様
コンペを行ったのですが、彼の考え方とテイストが合うのが良いと思いました。また、いろいろなことをご存知な点が良いと思いました。せっかくリノベーションするなら私のやりたいことがわかっている人が良いかなと思い、内山さんに設計してもらうことにしました。

内山
ぼくはとにかく、この空間のポテンシャルを一番活かすことと、Kさんが引越す理由、つまりもともとお住まいのところが、お一人で住むには広すぎることだったり、定期借地の都合で引越さなければいけない事情だったりを含めて、プランを組み立てプレゼンテーションを行いました。

谷島
なるほど。他に、内山さんにご依頼なさってよかったなと思うことはありますか?

K様
カーテンや照明、ソファなどの家具のことは、私は知らなかったので内山さんにショールームに連れて行っていただいたのですが、とても素敵でした。そういうことはとても大事だと思います。

谷島
設計は長くかかりましたか。

内山
Kさんの前のお宅を引越さなければ行けないという期限があったので、バタバタしましたが、予定していたよりも長く時間をいただいて設計しました。設計の時点で、皆さん、せっかく作るのだから全部一気に作りたくなるんですよね。ただ暮らしてみて初めてわかることや、家のスケールが変わるので、住み始めてすぐものは整理できないんです。住みながら整理してもらい、徐々に造作の家具を足しましょう、設計の時点でお話しました。



 
 

ニューヨーク暮らしが教えてくれた 
リノベーションして手に入れる豊かさ

 

谷島
この物件のもともとの状態を見た時、思われました?

K様
絶対いい住まいになると思いましたし、マンション暮らしへの憧れもありました。私一人だけなので一戸建ては考えていませんでしたし、以前住んでいた一戸建てでは窓の開け閉めが大変だったのでマンションしか考えていませんでした。知り合いに新築はもったいないということを言われ、中古を購入してリノベーションするということを最初から考えていましたので、いい物件に出会えたと思いました。

内山
それはある意味、ラッキーだと思います。なかなかそのような物件になかなか会えませんしね。

K様
ニューヨークは古いビルで中だけリノベーションするっていうのがほとんどなので。リノベーションというものが身近にあったのかもしれません。

谷島
ニューヨークの経験がおありだったから、リノベーションで変わるということがすんなり受け入れることができたのかもしれませんね。


 
 

リノベーションのポイント
 

内山
玄関に入ったところがとても暗かったんです。お一人ですし、入った瞬間に明るさを感じられるように壁を取りはらいました。また水廻りは大きく移動していません。リビングに貼られたこのフローリングは特注です。以前から、つきあっていた会社と試行錯誤していたのですが、ようやく良い色ができたので使いました。それと食器などをディスプレイしている、この白い家具もここに合わせて特注で造りました。ただフローリングも家具も特注ですが特別高いものではありません。以前より工夫して作ってきたので、かなり価格を抑えています。あと、絵画のコレクションがもともと多く、今回ここでは13点飾っています。この13点の絵画の額は銀座のITOYAで全て私が選び直したんです。実はこのディスプレイをすること自体、今回のリノベーションの目的でもあり、最初からコレクションや絵を飾ることを考え設計をしています。

K様
もともと飾りたいという希望があったので、やっとそれが実現してとても満足しています。以前は段ボールに埋もれていましたから。

内山
引越ししてからも、しまい込んでいたコレクションを少しずつ考えながらディスプレイしていましたね。みんな最初に慌てて造り込むのですが、出来上がるものにしないで、住んでいく中で必要なものを探すというアプローチはとても大切だと思います。

K様
一軒家からマンションに引越すのに一番大変なのは、どれを残してどれを処分するかの選択だと思います。設計が終わった頃には、かなりすっきりして、昔がどのようなものがあったのかも忘れました(笑)。以前住んでいた家を出るときも友人に「元気そうでびっくりした」と言われました。やっぱり新しく住む家の期待のほうが大きかったですから。

谷島
どのようなところが気に入られていますか。

K様
天井がとても気に入っています。マンションは一軒家にくらべ天井が低いものが多くて、気になっていたのですが、このデザインにしてもらって高く感じることができて良かったです。あとは決まりきったものを選ばなくてもいいのは、とても嬉しかったです。リノベーションってトータルなものだからいろいろな知識ってすごく大切だと思いました。選ぶのは私なんだけれど、「こういったものもありますよ」と言っていただけたので、こちらは選びやすかったです。

内山
Kさんは好き嫌いがはっきりしているのでやりやすかったですね。

K様
最近ではものを買うときに、置く場所はあるかな、と考えるようになりました。以前はあまりそういうことを考えずに買ってしまっていました。母と私は食器が好きでしたので集めていたのですが、以前の家では飾る場所がなくて。今回ようやくちゃんと飾ることができて嬉しいです。


 

 

今までの暮らしを編集し、
これからの暮らしに余白を残す
 


内山
以前の家は部屋ごとに扉のデザインが異なっていたことが印象的でした。それぞれ無垢材でできた立派なドアなんですが、デザインもとても良く、Kさんの思い入れもあるので利用したいと思っていました。現在の洗面所の扉はKさんのお部屋で使っていた扉を使っています。その他、以前の家から全部で4枚の扉を持ち込みました。

K様
ずっと使っていた扉や家具を持ってくることができてとても良かったと思います。

内山
その人の暮らしをデザインすることがリノベーションだと思うのですが、わざわざ造り込むことの大切さもあると思います。ただ、これから価値をつくっていくことを考えると、ちゃんと余白が残っていないと、なかなかうまくいかないと思います。

K様
私が言えるのは住む前に全部造ってしまうのではなく、住んでみて、またつくっていくことは大事かなと思いました。

内山
ただ一般的に余白というとホワイトアウトしたような真っ白な空間をつくって何もしないということをやるけれど、まずはベースをつくったなかでそこからプラスアルファの余白をつくっていく、そんなリノベーションの方法があると思います。

谷島
これまでのK様の一戸建てやニューヨークでの暮らし方やコレクションを大切にしながら、少しずつ新しい暮らしを創造していくことでK様だけの空間ができあがっていったんですね。今日はありがとうございました。